総評

審査委員長/飯田善彦

一次審査で選んだ8点の建築を巡る3日間の行程は、改めて北海道の自然の豊かさと厳しさを実感する機会となった。千歳→伊達→札幌→新得→北見→留辺蘂→サロマ湖畔、オホーツク海を経て下川→一挙に南下して千歳。道央から東、北部をほぼ一周するおよそ1,200キロをワンボックスカーで移動しながら、刻々と変わる天候や気温、森林、田畑、牧場、あるいは大小の都市や集落、車窓を次々過ぎていく実に多様な風景を経験しながら、各所に点在する建築に辿り着き待ち構えている設計者から説明を聞いていると、どれもそれぞれの建築が立ち現われる文脈に素直に納得してしまう説得力があり、その意味で、建築自体が過去から未来に流れる時間、常に変化する空間の中で、ある要請を受けた結果その時点、場所を刻印する座標点のような普遍性を備えているようにも思えた。この原稿を書いている今でも全ての建築に立ち会っていた時の状況を細部に至るまで思い出せるほどである。

今回2回目にして住宅、一般の2部門での募集となったが現地審査に選出された住宅3、一般5の作品には、どの建築にも豊かな物語があり、風土、気候、機能に関わる洞察があり、新たな歴史を作ろうとする強い意志があった。特に住宅は、3点共に、無数の可能性の中からなぜそのような建築を生み出したのか、という根本的な問いに対して、敷地が置かれた状況、生活空間の解釈を含め明確な意図によってこれまでにない成果を獲得している秀逸さを感じたし、一般建築も多岐にわたる要請を極めて知的に1つの環境にまとめているように思えた。最優秀、優秀、審査員個人賞、入選、は、順位づけというより私たち3人の異なる価値観が重なる領域の多少によるものである。

これからも北海道という環境を突き抜けつつ射程を伸ばしインターナショナルな建築の地平に輝く作品を期待したい。

審査委員/小篠隆生

第2回の今回から、住宅以外の一般建築も対象にした審査となり、住宅部門が10作品、一般建築部門が、17作品の応募があり、いよいよ「北海道建築大賞」という名称にふさわしい応募となった。一般建築部門は、幼児施設、学校施設、交流施設、まちおこしセンター、ホテル、オフィス、商業施設、斎場とバライエティに富んだ作品群の応募であった。27作品から一次審査で、住宅部門3作品、一般建築部門5作品を現地審査対象作品として、8作品が選出され、審査員全員で北海道各地に散らばる作品群を審査した。その中で感じたのは、それぞれの作品が、北海道の自然環境にどのように寄り添って建築空間を構築するのかという初源的なテーマが主流だった第1回とは違う、都市や地域、あるいは社会に対してどのような建築をつくるべきなのか、という問いをそれぞれの建築家が背負い、建築のあり様に対して、明確なコンセプトと表現が行われているかということであった。

そのため、作品が住宅であれ、一般建築であれ、地域や社会に対する建築家の姿勢とその作品自体が持つ強度がそのまま審査結果に繋がっていったと思う。この賞の主旨が示す「北海道の新たな建築文化に寄与する建築作品」への顕彰が、まさに「北海道」だからこそ創ることができる「北海道建築」に対するパースペクティブな視点を持った評価であると理解するならば、各審査員賞が設けられ、住宅2作品と一般建築1作品が選ばれたのは、その「北海道建築」の幅の広さと可能性があることを3作品を通じて示す必要性を感じたからである。そして、今後も繰り広げられる様々な努力の成果を期待しているからなのである。

審査委員/磯達雄

3日をかけて北海道の広域を回り、現地審査を行った。行き先はビルが建て込む大都市から、山間の小さな町や広大な農場まで。気象条件も雪が積もっていた寒冷地もあれば、穏やかな寒さのところもある。道内でも敷地条件には大きな違いがある。訪れた建物は、それぞれの良さを最大限に引き出す設計がなされていたように思えた。大賞、優秀賞、個人賞の各作品については個別に評するとして、ここではそれ以外の入選作について触れる。

「E OFFICE PROJECT」は木造の事務所建築として、「ASH」はロードサイドの美容院として、それぞれ手本となるような優れた建築だったが、もう一歩の突き抜けた特長を見出せず、大賞には選べなかった。「新得町都市農村施設カリンパニ」と「伊達の家」は、設計のコンセプトを明快に建築化している点を高く評価した。しかし現地を訪れた際に、抽象的なモデルの魅力を実際の建築が超えられていないように感じられ、推しきれなかった。

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