再見「ロングランエッセイ」の+と-
52:「 名作 」 住宅雑誌リプラン67号(2005年1月1日)より一部転載
「建築家が建てた幸福な家」という本が、永いあいだ住宅雑誌にかかわってきた女性記者から出された。どの住宅雑誌にも、出来たばかりの美しい住まいが、写真とともに魅惑的に紹介されている。
そういうなかで、「いろいろな建築家から新しい住宅を見せていただくたびに、この家に住むのはどんな家族なんだろう、どんな生活をしていくのだろう、年月がたつとどのようになっていくのだろう… 」とずっと気になっていたという。家を建ててから二、三十年も経っているのに、上手に住み続けている二十四軒を訪れ、住む人からここまでにいたる住まいと家族の歴史をじっくりと聞き取り、雑誌に紹介したことが、好評だったことから、一冊の本にまとめられた。さまざまな家族とそれぞれの建築家が、これが自分達の求める住まいだと心を込めて造った住まいには、凛とした建築家の姿勢と住む人の心構えが、いまでも、はっきり見ることができる。そして、二十年を超える「時」が、その住まいに、経済的に建築的に、そして社会的に評価を下しているが、住まいにこまめに手を入れ、心地よく住まい続けている家族が描かれていて、住まいを造る者にとっては、大変嬉しい。
「ここに紹介する建築家が設計した二十四軒の住宅は、原形をとどめながら二十年以上生き延びてきたこと、住人が愛おしんで、住み続けていること、それだけでも私の中では充分に『名作』になっている」という言葉が、なかなか泣かせる。
+: これまで、長く住み続けてもらえるように心掛けて、家を創ってきた。二、三十年経った家も多いが、先日お邪魔したのは、ほぼ四十年経った家だった。コンクリートブロックを二重に積んだ外断熱住宅の初期の家で、建主も高齢になって一人で住むようになったけれど、これからどうしたら良いだろうか、という相談だった。屋上防水も保証期間をはるかに超えて頑張ってくれたのでそろそろやり直そうというのと、いくつか気になるところを確認した。いつものように「誰が見ても、出来てから四十年は経っていると思えないし、四、五年前に建ったようにしか見えないですよ。」と自信もって言えるのが、嬉しい。さらに今回は、備え付けにした家具や収納の建具が、四十年経ったとは思えないほど、きちんと端正な姿だったのに驚いた。ブロック住宅の内部は、温度、湿度がいつも安定していたので、四十年経っても、建具が、曲がったり、反ったりすることの無いことが、新しく分かったことも嬉しかった。