再見「ロングランエッセイ」の+と-
45:「 サポーター 」 住宅雑誌リプラン60号(2003年4月1日)より一部転載
札幌のサッカーチームの[コンサドーレ]は、北海道産の日本語である。小柄ながら、吹雪の中でも立ち続ける北海道生まれの馬を、道産子という。そのドサンコを逆に読んでコンサド、後ろにサッカーの掛け声オーレを付けて、コンサドーレとしたのである。サポーター席で、まわりの人と一緒に「コンッサドーレ!」と叫ぶ時には、連帯を感じるし、ドサンコとしてのアイデンティティを意識させられる。
今、美唄市出身の彫刻家・安田侃が、世界的にも大きく注目されているなか、今年六月「安田侃の世界」展が、道立近代美術館とアルテピアッツァ美唄で催されることになった。しかし、イタリアから作品を送る費用が掛かりすぎるので、展示内容の縮少変更も検討しているという。それを残念に思う有志が、コンサドーレのサポーターのように、個人サポーターを募集して、安田侃の魅力を存分に表現する展覧会にしようと集まった。サッカーではなくて美術、しかも抽象彫刻のサポーターを集めるなど前代未聞であったが、ところが一月末には、なんと三百名近いサポーターと八百万円近くの寄付が寄せられ、二月になっても、その数は増え続けている。
拓銀、狂牛病、雪印など暗い事件ばかりが続いた北海道のなかにあって、この美術サポートへの関心には心を熱くするものがある。これは、個人が、文化を支えていることの証拠である。そう、個人の建てる住宅も、同じように北海道の文化を支えているのです。
+: ふるさと納税というのがある。過疎化したふるさとの現状を思い、子供の頃の風景や爺ちゃん 婆ちゃんと歩いた道を残して置いて欲しいし、ポツンと一軒家になっても、元気に暮らして欲し いという気持ちで、ふるさとのサポーターになるのは、良いと思う。同じ税金を払うなら、普通 行けない処の美味しいものが手に入るならと、中元や歳暮のカタログのような中から選び出した 返礼品の、あれも美味しかった、これも美味しかったと、得意気に話すのを聞くのは、少し寂し いように思う。味覚に頼らずに、海の潮風の香り、朝霧の立ち込めた香り、軒先の小さな氷柱な ど、やっぱり、もう一度訪れたなあ。子供や孫たちにも見せたい、経験させたなあと思わせるような返礼品ができないだろうか。