再見「ロングランエッセイ」の+と-

49:「 うちのそとからそとへ 」  住宅雑誌リプラン64号(2004年7月1日)より一部転載

 北海道のすまいは温かくするために、まず「うち」と「そと」を断熱材でしっかり遮断しなければならない。そのせいで、閉鎖的なすまいになり、半年におよぶ雪と寒さの冬の間は「うち」に閉じこもりやすい。
 断熱性能が良くなったことで、それまでは造ってはいけないとされていた吹き抜けも造ることができるようになり、開放的な「うちのそと」のような空間が、すまいのなかにどんどん造れるようになった。
 「うち」にある「土間」をもっと快適なものにしたら、「そと」につながる「うちのそと」が創れるに違いないといくつか試みてきた。特に庭に面して開放的に造られた「土間」は、「そと」ののびやかさにつながる「うちのそと」となる。春になって、風も空も雲もさわやかに春めいて、陽射しも柔らかくなってくると、「そと」の春が「土間」に入ってくるように思え、陽だまりを楽しむコンサーヴァトリィとなる。北海道の春を楽しむ「うちのそと」になる。

+: 雪の降る札幌から、鉄路で釧路に向かうと帯広辺りから晴れ間が多くなる。釧路の先の厚岸も、冬は寒いがよく晴れる。二十五年前に建てた厚岸の情報館が昨年改修されて、スッカリきれいになったというので、二月に見に行った。この建物は、初めて外断熱を施した公共施設と言われるほどで、屋根や外壁には当時最先端の工法を用いたので、二十五年経ってもしっかりしていた。開口部周りを優しくしようと、木製サッシやルーバーやデッキを設けたが、夏の日差しは少なく、冬の陽射しが強い厚岸でも、木部の劣化には勝てず、サッシを板金でカバーし、木部は合成木に置き換えてあった。しかし、内部は、ほとんど手を加えてなかったのは、やはり外断熱のおかげだったし、二月にもかかわらず、床暖と日射と豊富な蓄熱量によって、窓の多い閲覧室は心地良かった。