再見「ロングランエッセイ」の+と-

70:「 中通り 」  住宅雑誌リプラン85号(2009年8月26日)より一部転載

札幌の街は、分かりやすく歩きやすいと、旅行者に評判が良い。道路が東西南北に直角に交わっていて、条丁目がはっきりしているので、どこにいるのか、すぐ分かるからであるが、そこに住んでいる人にとっては道路も広く見通しが良いので、風通しが良すぎて、しっとりとした住宅地の雰囲気に欠ける。
 かつて住宅地として評判の高かった、山鼻地区の中通りのつくられ方を聞いて驚いた。条丁目の大きな道路に挟まれた一丁画を東西に通り抜ける中通りが、一本ごとに太さを変え、さらに、まっすぐ通り抜けできないように食い違わせてあるという。市街地図で確かめてみると、確かに太さの異なる中通りが、てんでばらばらに食い違いながら、配置されている。住宅地を静かにするために、むやみに車を入れない方法であるが、画期的である。真駒内、大麻、ひばりが丘などの住宅団地では、歩行者と車の分離する方法が提案されたが、このように単純で明快なものはなかった。
 信州の松本と山口の萩では、古い町並みを残しており、どれも幅が狭く一車線がようやっとで、一方通行であり、人が多いときは、通行止めであったりする。そぞろ歩くのにほどよい幅で、車を優先させる「道路」ではなく、人の歩くのを優先する「路」だぞといっていた。
 札幌には、そぞろ歩くところがない。中通りを落ち着いた雰囲気につくり上げ、それらが雁行しながら連続して、札幌の街なかを歩きまわれる、ジグザグ中通りネットワークをつくるのが良い。札幌にそぞろ歩く道をつくりたいものである。
 

+: 東西南北にキッチリ仕切られた札幌市街地の西に、西線十四条あたりから円山あたりに向かう斜めの路(みち)がある。円山村、藻岩村の頃に使われていた道だが、南北に通る東屯田通り、西屯田通りのような気配はない。のんびり歩くのには快適だし車は少ない。しかし、車が道に入ってくると途端に緊張する道路幅なので、通行を禁止して遊歩道にして欲しい。
 これを手始めとして、市内をぐるりと回る遊歩道をどんどん増やしたい。車最優先の道路のグリットのなかに、斜めの遊歩道が、広がったり縮んだりしながら、札幌中心市街地をウネウネ回っていたら、新しいサッポロ散策ルートが生まれ、屋外彫刻設けるし、大通りだけでない市域全体での雪祭りもできる。冬季オリンピックまでに造って欲しい。