再見「ロングランエッセイ」の+と-

11:「  飲まない水  」  住宅雑誌リプラン26号(平成6年9月25日)より一部転載

内地は水不足で大変なようです。水洗便所で流す水もままならず汲み置いた水を持って便所に入るという。しかしそのまま飲めるような水道の水を汚物流しに使うのはもったいないです。汚物流しに使うには、皿や茶わんを洗った水でも十分です。今年の水不足では皿を洗うために水もないので、紙の皿を使っているという。
暮らしの知恵として、風呂の残り湯を洗濯に使ったりしているがさらに洗濯の残り水を便所の排水に使えば、同じ水を三倍に利用できることになる。「飲まなくても良い水」を何度も上手に使うことが「飲める水」を大事に使うことにつながる。まして飲める水を使って車を洗うなんてことは、もったいない。
近頃は、飲み水を何度も利用する『中水』が作られている。大きなホテルの洗面や浴室などに使われる水は膨大な量になるため、それを地下などに貯めて浄化して、便所の排水用の水として作られたもので、上水と下水の中間の水という意味から、このように呼ばれている。
文化の発展は、水の消費量でわかると言われているが、上下水道の完備につれて、ますます一人当たりの水の消費量は増え、日本の文化度は高くなったらしい。
しかし、暮らしの中で、飲み水でなくても良いのに、全て「飲める水」を使うというのはぜいたく過ぎると思う。

:京極のふき出し公園の水を汲みに出かけることもあるが、池も駐車場もきれいに整備されて便利になった。汲んできた水は、軟かくて美味しいので、タンクの水が少なくなるとチビチビ使うようになる。前に、京極町の人に、こんなに美味い水、町中に配れば良いのに、といったら、水道水の基準があって、殺菌しなければダメだといわれた。
札幌でも、水質検査を通れば、井戸水を飲料に使えるが、大雪山系の地下水の豊かな東川町では水道をやめて、各戸で水を汲み上げて、飲料水としているという。そこで札幌から東川町に移転したレストランに行ってみたら、ずいぶんと美味しくなった気がした。一段と美味しくなった理由の一つは、地下水にもあると思ったが、地下水もそれぞれ味が違うというから、腕も上がったに違いない。