再見「ロングランエッセイ」の+と-

25:「 素 地 」  住宅雑誌リプラン40号(1998年4月1日)より一部転載

外断熱を施した住宅の外側の壁として、コンクリート・ブロックを使うことが多い。コンクリート・ブロックを積んで、素地のままにしているので、ブロック塀で作られている住宅のように見える。2階建てだが、工事現場の仮囲いが取り外されて全体の姿があらわになってから、建て主からは、何度も「どんな色を塗るのですか」と聞かれたという。その度に、申し訳なさそうに「何にも塗らない」と答える。
「そうか自然のままの感じなんだ」と云う人の他は、皆黙ってしまうという。私はそのまま、素地のままが良いと思う。素材に元々色があったものは、時が経っても、魅力が保つ。洗いざらしのジーパン、綿のシャツ、ジュートや麻やヘッシャンクロスなど自然素材を見直すようになってきたのも、この素地の良さに気が付いたからではないだろうか。
確かに色を塗ることで楽しくなったり、明るくなったりするが、色は時の経過と共にあせる。あせた姿は、みすぼらしくて美しくない。それにくらべて素地が持っていた色は、時を経る程に味わいが深まり、魅力的になる。美しく年を重ねるというやつである。誰も彼も、すぐはがれる厚化粧を止めて・素っぴんで勝負しろとは云わないが、若い時には素材の持つ新鮮な魅力を楽しんで欲しいものである。コンクリート・ブロック素地のままの外壁は、年を経る程に味のある表情になるに違いない。楽しみにして欲しい。

+:コンクリートブロックを外断熱の外側に積むようになって、30年近くなった。30年前に積んだブロックの壁は、まだしっかり断熱材を保護しているので、室内環境は、いまでも快適である。これだけの室内環境の良さがあって、この頑丈さなら、冬季間の災害時でも、十分耐えられるので、避難場所登録も可能である。さすがに30年以上も厳しい積雪寒冷と日射にさらされた外壁は、くたびれた感もあるが、内部は竣工した時と同じだと評判である。内部もコンクリートブロックの素地のままにしているので、表情は硬い感じもするが、少しも劣化した感じはない。暖房が床暖房なので、暖めた空気を回す、空気暖房と違って、ホコリが舞い上がることがない。本棚や神棚の上にホコリが溜まることがない。むしろ、コンクリートブロックが乾燥がすすみ、明るくなってくるので、いっそう優しい素地の感じが出ている。
さらに素地というより素朴な風情が加わってくるので、内外共にブロック素地仕上げは、止められないのである。