再見「ロングランエッセイ」の+と-

64:「 ブロック住宅」  住宅雑誌リプラン79号(2008年1月1日)より一部転載

 北海道では、昭和二十年の終わり頃から、不燃化と気密化と断熱性に配慮した三角屋根のブロック住宅が考案され推奨されて、数多く建てられた。その建ち並ぶ風景は、内地では見ることのない、日本離れした風景であった。内地から来た十八歳の若者にとっては、新しい自分が作れそうに思え、どこかが解放された気持ちにさせてくれた風景であった。
 昭和三十年頃からブロック住宅に住んでいる人の相談を受けた。三人の子どもの成長とともに手狭になって途中で増築されていた。「周りも全部ブロックの住宅だったのに、ほとんどが壊されてしまって残念です。かわいそうだから、一部でも残せないだろうか」という話にすっかり同調して、古いブロックの構造を活かして建てることになった。
 四十五年以上も前に見た三角屋根のブロック住宅が整然と並んでいた風景が、私にとっての原風景ではないかと思う。北海道にしかないコンクリートブロックの表情を大事にしていきたいと思った。

+: 前回、去年の北海道建築展2022会場に設置した「SASA」についての写真家藤塚光政氏のコメントを載せましたが、二十年近く前書いた「ブロック住宅」に使用した解体後の架構写真に、プリミテイブな魅力を感じた記憶があり、そこにそれまでの架構としての「遺構」の気配や時間の経過を強く感じたのだと思う。その思いが心に潜んでいて、円を内包する家の展示を考え、長方形の中に円筒の架構をイメージした時、「遺構から遺跡に」という言葉が、引き出されてきたように思う。これまでのブロック住宅への熱い思いというか、執念というか、サガというようなものに、より抽象的な形態として「SASA」が押し出されて来たように思う。
 そうなんです。やはり、覚悟を決めて、ブロック住宅への情熱を持続しなければ。と再認識したところです。